夢、カトルセゾン
フランス語で「四季」を表す「カトルセゾン」。そこには、オーナーの夢が詰まっていた。
私たちが訪れたのは土曜日のお昼ごろ。かわいらしい扉を開くと、料理と共におしゃべりに花を咲かせたお客さんたちの楽しそうな声が聞こえてきた。ショウケースに並ぶ色鮮やかなタルトたちは、楽しい空間をカラフルに彩っている。にぎわう店内を見れば、どんなにお店が愛されているかが分かる。
取材をさせていただいたのは前オーナーの堀内憲二さんと現オーナーの村松大地さん。堀内さんは開店から12年間オーナーを務め、今年4月に村松さん夫婦にそのバトンを渡した。秋田県外から移住し、秋田の魅力に惹きつけられた二人。ここで出会ったのも運命だったのではないだろうか。
秋田のおいしいを次の世代へ
堀内さんは東京出身。初めはサラリーマンをしていたが、カフェ開業の夢をかなえるための資金集めとして寿司屋として独立。その後フランスへ飛び立ち現地の味を学び、帰国後埼玉でカフェを開いた。最終的に秋田にたどり着き、今のカトルセゾンを開店した。
自らを「食いしん坊」と称する堀内さん。料理はすべて独学で学んできたという。食いしん坊だからこそおいしいものに敏感。自分が本当に「おいしい」と感じたものをお客さんに提供したいと語っていた。
堀内さんは秋田の魅力を「食べ物のおいしさ」と語った。最初に食べたときはそのおいしさに驚いたという。とりこになった堀内さんは、これらを存分に生かした料理を提供したいと考えた。食いしん坊で「おいしい」に敏感な堀内さんは食材の旬を大切にしている。旬とは魚介類や野菜などの、最も味の良い出盛りの時期。「その季節の最もおいしい秋田の食材を食べてもらいたい」。そういった思いから、四季を意味する「カトルセゾン」という名前が付いたのだ。ゆえにショウケースには、季節のフルーツを使った色とりどりのタルトが並んでいる。「ここのタルトが世界一!」と通ってくるお客さんもいるようで、堀内さんの思いは伝わっているに違いない。
そんな堀内さんは今年で70になる。2年ほど前からお店のこれからについて考えていたようだ。お店を畳むことを考えたこともあったが、そこで真っ先に思いついたのはお客さんのことだった。もしお店を畳んでしまったら、この店の味が好きで通ってくれているお客さんを裏切ることになると考えたのだ。そこで思いついたのが「事業継承」である。市役所のサポートの甲斐もあり、村松夫婦と巡り合うことになったのだ。
引き継がれる大切な思い
堀内さんのお客様と食材への愛は村松さん夫婦に受け継がれた。旦那さんである村松大地さんは元食品メーカー勤務で、今年3月に愛知県から秋田県に夫婦で移住してきた。前職では商品の製造や開発に携わっていた。仕事にやりがいは感じていたが、30歳という節目を前に新しいことに挑戦したいと思い立った。お父様が自営業を営んでいたためそちらの方面に興味があったことに加え、事業継承にも興味があり、何かないかと探していた時カトルセゾンのオーナー募集の広告を見つけた。夫婦は4月から店頭に立ちカトルセゾンのオーナーとして日々奮闘している。
食品メーカー時代は、自分たちの商品をお客様が手に取っている様子を実際に見る機会はなかったという。今は目の前でお客さんの反応を見ることができるのでとても新鮮で、「おいしかった」の笑顔を見るとうれしい、とはにかみながら大地さんは語った。しかし、その「おいしい」に甘えずにさらに良いものを提供し続けたい、とも力強く語っていた。さらに良いものを、常に最高のものを。お客様を第一に思う堀内さんの考えは、若きオーナーに確実に受け継がれている。
堀内さんの話を頷きながら聞く
後継者の村松さん
由利牛のオムライス
私たちがいただいたのは「由利牛のオムライス」。きらめくトロトロ卵の山の上には、由利牛のかたまりが堂々とそびえたつ。その上にたっぷりとデミグラスソースがかかっている。縦に柔らかく割けるお肉は口の中でほろほろに溶けてしまう。あまりにおいしいので一切れは最後の最後までとっておいた。卵の中には雑穀米が詰まっていてボリューム満点の一品だ。
タルトもおすすめなので、オムライスとタルトの両方を食べたい人は、うんとお腹を空かせて向かってほしい。
文/秋田大学 高橋
Information
カフェ・カトルセゾン
〒015-0834 秋田県由利本荘市岩渕下50
☎0184-22-3001
■定休日/火曜日
■営業時間/11:00~20:00
カトルセゾンはフランス語で「四季」という意味。
カフェ・カトルセゾンは季節に合わせたフレッシュフルーツをふんだんに使ったタルト、 ケーキ、コンフィチュール、焼き菓子などを取り揃えたお店です。また、フレンチトーストやサンドイッチなどの軽食や、ピザ、グラタン、オムライスなどバラエティー豊かなメニューがお楽しみいただけます。