ひと

有限会社コーリヤマ 藤河正弘さん

有限会社コーリヤマとは?

有限会社コーリヤマは秋田県羽後町にある会社である。事業としては大手ブランドシューズを主要の取引先とした靴の加工製造や「JOLI ALL LEATHER ITEMS」という自社ブランドで革小物の販売を行っている会社であり、創業から40年以上靴の甲部造りに携わっている。現代表取締役の藤河正弘社長のお母さまが女性が集える場を作りたいという思いからできた会社である。ピンクと青が特徴的なコーポレートカラーとなっておりピンクが下、青が上といったカラーとなっておりこれは女性に男性が支えられているということを表しているのだという。

今回私たちは働く意味について考えということをテーマに様々な経営者の方にお話を伺うこととした。働くとはどういう意味だろう。また、地元である秋田で働くとはどういうことなのだろう。一度は秋田の若者であれば考えたことがあるのではないだろうか。そうした疑問を解消する術を探すべく、私たちは秋田県の企業である有限会社コーリヤマの藤河正弘社長に様々なお話を伺うことにした。

職場環境について

コーリヤマは男女比が特徴的な会社だ。コーリヤマの男女比は8割が女性、2割が男性となっている。こうした比率の理由としてミシンを扱う仕事であったため女性が多くなったのではないかと藤河社長は仰った。また、女性が多い職場であるため家庭の事情を考慮し、働きやすい環境にすることはできるとも仰っていた。しかし、体系としてはまだしっかりとした仕組みがないためそれが今後の課題だとしていた。

また、藤河社長に私たちは「良い職場環境とは何か」という問いかけをした。それに対し、藤河社長は「良い職場環境とは風通しのよい職場環境だ」と答えられらた。様々なことを気軽に話し合える環境であれば社員一人一人のパフォーマンスが向上するため、トップダウンではなくみんなで知恵を出し合える職場が良い環境と言えると藤河社長は仰った。また、どうしたらそうした職場を作っていけるかということに対しては「自分の目線を社員の目線と同じ目線にする」ということを意識することだと仰られていた。そうすることによって普段通りに声をかけてもらえるようにしているのだという。

コロナ禍における会社への影響

新型コロナウイルスは私たちの生活を大きく蝕んだ。頑張ったことのあとの楽しみの旅行も、休日に友達と気軽に遊びに行くことも。日常生活に様々な苦難が押し寄せた。

しかし、それは娯楽に限ったことではない。仕事の面でも様々な企業が崖っぷちに立たされた。そんななか、有限会社コーリヤマは一体どんな影響を受けたのだろうか?

藤河社長はコロナ禍における経営について語ってくれた。

コーリヤマは新型コロナウイルスの影響で受注量が7割減という影響を受けたという。先行きが分からずどうすればよいのかわからない状況で手探り状態であった。本社の工場はトータルで3か月休業している状態であり厳しい状況だったと言えるだろう。

しかし、そんな中でもコーリヤマは自社ブランドの発信を続けていったという。そしてその結果、すごもり需要が高まっていたこともありブランドの売り上げが好調となり、結果的に全体の売り上げ減は3割減ほどで抑えることができたのだという。このブランドは10年前に立ち上げたものであったが立ち上げた当初はなかなか認知してもらえず、売り上げが厳しい状態が続いたという。しかし、SNSを用いて積極的に発信していくことで徐々に認知してもらえるようになり、現在はフォロワーも18000人ほどになり売り上げも上がって来たのだという。

また、工場が休業している間は社員と普段はできない議論をすることによって会社の方針についてみんなで考えるという貴重な時間を過ごすことができたという。

これらのことからコーリヤマはコロナ禍という様々な企業が危機に陥った状況の中でも、自社ブランドの発信や経営について社員間で議論を行うといったことを通して苦境をもチャンスに変え、社員のことを考えて行動してきた会社だと言えるだろう。

地域で働く魅力について

藤河社長は羽後町で経営していることについて今後、会社を他に移すことは考えていないという。その理由は地域の名前を社名にしていることもあるが、地域に育てられているという意識や地域に根差していく、恩返ししていきたいという思いがあるため離れずにいたいからという気持ちがあるからだという。しかし地方では情報やビジネスの面では足りないところもあるためそこはカバーしていく必要があると仰っていた。

これを聞いて私は自分が育ってきた町に恩返しをするという考え方が素敵だと感じた。誰かのために何かをするというのが働いていく上でカギになるのかもしれない。

また藤河社長は地元で働く魅力もお話して下さった。藤河社長は人として豊かに暮らしていくには田舎の方が豊かに暮らせるという考えを持っていた。その理由としては田舎の方が人と人との関わりが密であるため支え合いができるからだという。

確かに人との関わりが少ない人生がつまらないだろうと考えさせられた。密な関わりの中で人と構築していく信頼は生きていく上で非常に重要な財産となっていくのかもしれない。

藤河社長は地域の魅力は自分たちで作っていくしかないとも仰っていた。例えば大企業を大きな輪で表してみる。すると、大企業だと仕事量が多く隙間ができてしまう。お客様の要望が多様化する中でその隙間を満たすためには小さな輪が必要になってくる。その輪を小さな輪こそが小さな企業だという。そうした小さな輪になってお客様のニーズを満たすという魅力が地域にはあるということだろう。ある一点に注目するのではなく、俯瞰から物事を眺めることで見えてくるものもあるという藤河社長のメッセ―ジをこの言葉から感じた。

仕事のやりがい・喜びについて

仕事のやりがい・喜びについて藤河社長は「社員さんが喜んでくれることだ」と仰った。例えば社員さんに「ここで働いていてよかった」と言ってもらえる時が嬉しいのだという。

また、藤河社長はコーリヤマを経営していく上で「ものづくり」に携わる仕事をしているが「ものづくり」の仕事を喜んでもらうための仕事だと認識していた。そして下請けのみでなく自社のブランドをもつことで社員の意識が変わったという。下請けであればコスト削減の考えのもとで仕事をするのだが自社のブランドになると買ってもらえないと売り上げにならないのでどうすればお客様に買ってもらえるかを考えるようになったという。そしてそれを考える際にお客様の喜びの声を社員間で共有することによって新たな喜びに繋がるのだと仰っていた。

このことから働いていく上では誰かの喜びについて考えていくことが大切なのだと感じた。自分の利益のみを追求するのではなく、サービスを提供する相手方の幸せを考え、それを感じたときにやりがいを感じるのではないだろうか。

今後の方針について

藤河社長は今後の会社の方針としてお客様に喜んでいただくことはもちろん、「脱下請け」を目指すことを掲げていた。そのために行っていきたいこととしてお客様との繋がりを強めるということを仰っていた。

例えば今は自社ブランドのサイトでしかお客様と繋がれていないが都内にカフェ機能を附属したショールームを開くことによってお客様の商品を手に取って世界観を感じてもらうということをしたいと仰っていた。またこの他にも新ブランドの開設・新製品の開発を行っていきたいのだという。

外部環境で決められるのではなく自分で道を切り開いていこうという藤河社長の思いを知り、新しいことに挑戦していく勇気に感動した。

若い世代へのアドバイス

最後に藤河社長にこれから社会にでて仕事と向き合って生きていく若者へのアドバイスをお願いした。

まず藤河社長は働く基準についてお話して下さった。藤河社長は働く基準は「楽しい仕事が良い」と仰った。この「楽しい」というのは働く環境を楽しいと思えることである。様々な価値観を持つ人と接していくことで自分の器を広げることに繋がると仰っていた。

また、藤河社長は世の中にある仕事は社会に役立つし必要とされているものだという。どの仕事においてもそれをすることによって喜ぶ人がいて、それを見つけられることが仕事のやりがいを得ていく上で必要になっていくのだという。このやりがいを見つけるには長い時間がかかるが、いつか必ず見つかるとエールを送ってくださった。

最後に

今回、藤河社長のお話を聞いて私は「働く意味」について深く考えることができたと思った。藤河社長のお言葉から私は働く意味とは「誰かに喜んでもらうことをする」ことであると思う。確かに働くことによって収入を得て、それを使って好きなことをするために働くという人もいるだろう。しかし心を豊かにして働いていくためには人のために何かをするということが非常に重要になってくると感じ、私も将来誰かに喜んでもらうために働きたいと強く感じた。そうすることによって人との関わりが豊かになり自分の人生を豊かにすることに繋がるのではないだろうか。今回学んだことを忘れず社会人になっても活かしていきたいと思った。

貴重なお時間を割いてお話をしてくださった藤河社長に厚く御礼申し上げます。

最後にゼミメンバーの感想を紹介させて頂きます。 

働くことの魅力は「誰かを喜ばせることができること」であり、藤河さんにとってその誰かは「お客様」でもあり「社員の方々」であるというお話が印象的だった。また、藤河さんが「どんな仕事も誰かの役に立っている、必要とされている」とおっしゃっていて、私たちが最初に働くことの意味を考えたときの結論と同じだったので、こういった形で繋がったと同時に、「地域社会で働くということは」ということの答えに少し近づけたのではないかと思う。

野崎

藤河さんへの取材を通し、”働く”ということについてより深く考えられた。やりがいを見つけ、目的をもって働くことは楽しいが、それは同時に難しことでもあると学んだ。またコロナの影響もマイナスなことばかりではなく、捉え方や時間の使い方によってプラスに変わることも知った。お話を聞く中で職場の環境は非常に重要な要素だと感じた。インスタの発信の工夫等自分たちの活動に通ずることも聞けたので活かしてきたい。

進藤

藤河さんの考え方や思いを聞けてとても面白かった。「ものづくり」をしている側の人から直接お話を聞ける経験が貴重だと感じた。初回の実習で、「誰かの幸せや社会のために働く」という話があったが、藤河さんもそのような思いで働いていることを知ることができた。今までは働くことに対する意識や考え方がぼやけていたが、実際に働いている人から話を聞くことで、自分の中で働くことに対する意識がはっきりさせていくことができるようになっていくのではないかと感じた。また、良い職場環境の作り方や今後の方針に対する考え方など、会社の内部に関するお話も多く聞けて嬉しかった。実際に経営している方々はどのような考えのもとで会社を動かしているかということを直接聞ける機会は普段ないため、とても興味深いお話だった。

大山

秋田の羽後町で下請けや自社ブランドの確立を通してものづくり事業を行うコーリヤマへのインタビューで地方の中小企業が果たせること、大切にしていることがわかった。「大企業は大きな輪で、中小企業は小さな輪であり、中小企業が無いと穴だらけになってしまう。中小企業は変幻自在。」という表現を聞き、中小企業の存在の大切さを実感することができ、中小企業で働くことの魅力であると考える。

石川

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