ひと

有限会社日野 日野亨さん

有限会社日野とは?

 有限会社日野は秋田県横手市増田町に本社を置く、飲食業・食肉処理販売業を行っている会社である。会社の前身は先代社長である日野亨さんの父が創業した精肉店であり、現在は県内で有名な高級焼肉店「牛玄亭」をはじめとして、焼肉店を中心とした多くの飲食店を県内に展開している。

 今も続くコロナ禍で、多くの若者は将来や働くことに対して不安を感じているだろう。今回私たちは「地域社会で働くということ」というテーマを軸に、事業を継いだ理由やコロナウイルスによる事業への影響、秋田という地域で働く魅力、そして「働く」意味といったことについて、有限会社日野の日野亨さんにお話を伺った。

外食事業を始めた理由

 日野さんは次男で母からは家業を継がなくてもいいとの言葉があったが、父が商売は楽しいと口にしていたことから、自分で作り上げられる家業は楽しそうと思うようになり、日野さんの父が創業した「日野精肉店」を継いだ。当時は個人店や商店街などが廃れていく時代であったが、両親が生き生きと楽しそうに働いていたことから、その当時家業を継ぐことに不安はなかったそうだ。

 稼業を継いだ日野さんは、もとからある資産を活かして時代の流れに合わせるために「外食業の展開」を考えた。しかし両親に事業提案をするも、父や兄から否定されることも多く、一筋縄ではいかなかった。最終的に6年かけて説得することができ、31歳の時に会社化、32歳の時に店舗出店を果たしたのだった。

地域に愛されるお店づくり

 有限会社日野は、秋田市の「牛玄亭」や横手市の「豚玄亭」など、秋田県内の様々な地域にそれぞれ特徴のある店舗を展開している。なぜ、それぞれの地域に性質の異なる店舗を出店しているのだろうか。

 日野さんはチェーン店の様にどこでも同じものがあるのは効率的だが、つまらないと考えており、同じ店をつくらないようにしているそうだ。また店はそこで働いている人によって左右されるという考えのもと、マニュアルをあえて設定せず、社員の自発性を大切にしている。お客様に根ざした「おなかだけではなく心も満たすお店」を目指し、「自分の街のお店」として地域に合った愛される店づくりを行っているのだ。

コロナ禍における会社への影響

 2020年から今も続く新型コロナウイルスの流行。私たちの生活も大きく変化したが、外食産業にはどのような影響があったのか伺った。

 店舗を営業できない期間があったため経営状況が厳しく、会社がつぶれる覚悟もしたそうだ。そういった状況の中でも、日野さんは「社員のためにある会社であるから」という考えで、社員の雇用を守ることを最優先に経営を行った。社員に危機感の共有、当事者意識を持ってもらうこと、仲間意識を持ってもらうことを重視し、また例外的にダブルワークを認め、社員に暮らしを守るように指示した。さらに新事業としてテイクアウト専門店を展開し、新たに仕事をつくることでも、雇用を守ることに全力で取り組んだのである。

 日野さんは、会社の内部の強化も行った。研修会に力を入れることで、結束力やモチベーションを高めることに繋がり、逆にコロナ禍だからこそ普段はできなかった部分の強化をできたことはよかった点であると言えるだろう。

「秋田」で働く魅力

 有限会社日野は現在、秋田県内のみで店舗展開を行っている。日野さんが「秋田」という地域にこだわる理由は、一体何なのだろうか。

 外食事業を始めた当初、日本全国ではなく秋田の県南地区に店を数店出店したいという考えで経営を行っていた。そのことについて日野さんは「当時は夢が小さかったのかもしれない」と語った。しかし秋田が好きだという気持ち、地元秋田の役に立ちたいという気持ちがあり、現在も秋田県内だけで事業展開を行っている。

 また日野さんは都会で生活していたとき、人がたくさんいてもその多くは縁のない人ばかりだと感じていたそうだ。秋田は人とのつながりが濃く、縁があるということが、秋田で働く魅力であると仰っていた。

「働く」ということ

 日野さんは「人と共に生きたい」という思いを強く持っており、もともと店舗の展開は売り上げの増加を重視したものではなく、自分の存在意義を見出すために行っていたそう。自分の暮らしを成り立たせるためでもあるが、社会にとって自分の会社はどんな価値があるのかという思いを持ち、「お役立ち」のために仕事をすることが「働く」ということであると仰っていた。

 人から頼まれるということは相手から期待されているということで、その期待を想像し、期待を超える努力をする。期待を越えた結果として人に感謝され、存在意義を認められ、喜ばれる人になることがやりがい、つまり「心の報酬」であり、人生を豊かにするのだ。

 そして日野さんから、「仕事はお金を稼ぐ手段ではなく、役に立つこと。すべての仕事が必要とされていて意味や価値があり、社会を支え、役に立っている。どう役に立ちたいのかを仕事を人生と関連付けて考えてほしい」という、私たち若者に向けたメッセージをいただいた。

最後に

 今回、メインインタビュアーを務めさせていただいた野﨑です。すべての仕事には価値があり、どうやって人の役に立つかということを考えて働いていくことが大切だというお話がとても印象的で、これは私たちが活動の最初に考えた「何のために働くのか」という問いに対する答えと共通する部分があり、誰かの役に立つという気持ちが働いていくうえで忘れてはならない要素であると強く感じました。またお客様はもちろん、社員を幸せにしたいというお話から、日野さんにとって周りの人や関わる方々を幸せにすることが「お役立ち」であるのだと感じました。

 貴重なお時間を割いてお話をしてくださった日野さんに厚く御礼申し上げます。

(文/秋田大学 野﨑)

ここで一緒に取材を行った学生の感想を紹介させて頂きます。 

 日野社長のお話を聞いて私は「仕事をお金稼ぎの道具にしない」という言葉がとても印象に残りました。生きていく上で収入というものはやはり大切だと思います。しかし、日野社長が働くことによって誰かに評価されてうれしいと感じる心の報酬をお金の他にもらえることに魅力を感じているというのを聞いてやはりお金だけではなく誰かの役に立って生きるという共存が豊かに働いていく上にキーワードになるのではないかと感じました。
 今回学ばせていただいた貴重なことを忘れず今後に生かしていきたいと感じました。

 日野さんのやりがいを感じる点について同じ物事に対してもありがたいと思える人と当たり前だと思ってしまう人とがいるというお話を聞いて、私も小さなことでもありがたいと思えるようにしようと心がけていたため、これからもその心がけを大切にしていきたいと考えます。
 現在、就職活動が本格化しつつあるため、日野さんの仕事に対する思いや考え方をお聞きして、企業研究や就職先を考えるにあたって参考にさせていただきたいと思うことが多くありました。就職先を考えるにあたってやりたいことができる環境というのは理想的ですが、他にも社会を構成する一員としてどのように役立ちたいかという視点も持って就職活動を進めていきたいと考えます。

石川

 全5回の取材を通して、経営者の方々の従業員への想いやお客様への想い、仕事に対する考え方を聞くことができ、「働く」ことに関して質問したときに、「人とのつながり」や「役に立つ」ということに関する答えが共通していたように感じます。以前の自分は「生活のため」という視点からの考え方でしたが、取材を通して「役に立つ」という視点から働くことについて考えていけるようになりました。
 また、日野さんから、「お金を稼ぐ手段として仕事を選ぶのは苦しくなるから、お役立ちという視点を持ってほしい」というアドバイスを頂くことができました。今後の就職活動でもその視点を忘れずにいたいと感じました。

大山

 仕事は「お役立ち」だという視点を持ち、人に喜ばれることが人生を豊かにするという考えは非常に参考になりました。この考えを持てば、仕事=苦痛ではなくなり、常にやりがいを持って生き生きと働くことができそうだと感じました。
 また、働いて人と関わる中で気付けることがたくさんあると学べました。これは秋田という地だからこそできる魅力だと思います。自分もいろんな人と関わる職業に就き、価値観を成長させていきたいです。

進藤

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