矢島が誇る 創業190年の天寿酒造
鳥海山の麓、由利本荘市矢島町で創業190年を迎えた造り酒屋「天寿酒造株式会社」。代表的な銘柄は「天寿」「鳥海山」。軟水である鳥海山の伏流水と子吉川流域で育った米を使用し、きめの細かいまろやかなお酒をつくる。
店内にはたくさんの種類のお酒が並ぶ。ギフトセットや店舗限定商品など、品ぞろえが豊富である。原料の余りからつくられた煎餅やTシャツ・トートバッグなども販売している。
七代目社長の大井建史さんにお話を伺った。
地元の原料を活かした うまいの追求
「地元でできる一番良い酒をつくる」。これが天寿酒造のテーマであると大井さんは話す。原料となる米はすべて地元産のものを使用している。その米作りからこだわるために「天寿酒米研究会」を昭和58年に設立した。蔵人と一般農家の人々から構成されたこの研究会では、酒米栽培の契約だけではなく、品質を向上させるための勉強会も行っている。
地元農家とのつながりを大切にし、上質なお酒をつくることで天寿酒造は地域とともに豊かになることを目指している。
日本酒はここ30年ほど衰退の時代にあった。もともとお酒は、祭りや祝いの場で飲まれる特別なものであった。しかし、高度経済成長期に消費量が急激に増えて身近なものとなり、大量生産が主流になったことで日本酒の味の質が落ちてしまった。さらに、ビールやワインなどの外国酒が流通するようになり、日本酒はいつしか飲まれなくなってしまった。
そんな中で生き残るために天寿酒造は、原点に立ち返り「うまい」酒をつくることに努めた。原料や製法にこだわることはもちろん、その時代の「うまい」を徹底的に追及してきたという。
第五の味覚「UMAMI」、世界へと
近年、日本酒は国内外で注目を集めている。国内では日本酒を取り扱う店が増え、製造される種類も多様化している。日本酒バルやアンテナショップで、日本各地のお酒を気軽に楽しむことができるようになった。国外では、2013年に「和食」が世界無形文化遺産に登録されるとともに、日本酒への関心も高まった。近年発見され世界から注目を集める第5の味覚「umami」を含む日本酒は、和食だけでなく世界中の料理と相性が良いといわれる。海外の人が日本酒を評価するコンテストなども各地で開かれている。香りと色を楽しむために、ワイングラスで日本酒を飲むというスタイルも登場した。
天寿酒造では、20年以上前から海外への輸出を行っており、現在ではそれらが約1割を占めるという。また、商品の数々はこれまでに国際的なコンテストでたくさんの賞を獲得している。
地元への愛と品質へのこだわりがつまった天寿酒造のお酒は、今後も国内外から注目を集め続けるだろう。
日本酒になじみがない人も、天寿酒造のお酒を一度飲んでみてほしい。どこまでも「うまい」酒を追求する大井さんの熱意を知ってから飲むと、より一層味に深みを感じられるに違いない。
文/秋田大学 池田
Information
190年の長きにわたり人々に愛され続ける天寿酒造は、二代目大井永吉氏が東北の麗峰鳥海山の麓でその伏流水が使える由利本荘市矢島町で創業。「酒造りは米作りから」と昭和58年には「天寿酒米研究会」を発足させ、酒造好適米美山錦・秋田酒こまちの栽培に取り組み続け、この土地でできる最高の日本酒を目指して挑戦し続けています。近年は海外のコンテストでも数々の賞に輝き、その品質の高さが証明されています。
天寿酒造株式会社
〒015-0411 秋田県由利本荘市矢島町城内八森下117
☎0184-55-3165
■定休日/土・日曜日
■営業時間/8:00~17:00