元々は塩卸売業営んでいた山吉肥料店。山中家の内蔵は昭和八年に建築が始まり昭和10年頃に完成したもので、現存するものでは1番新しい。昭和以降はコンクリートの普及により内蔵造りは衰退していった。内蔵の建築文化の終盤期に建てられたため、山吉肥料店では増田の蔵の集大成を見ることができるといえるだろう。
内蔵は高さ10メートルで、扉は片側だけで1トンあるという。扉を支える蝶番や、麻の葉をモチーフとした組子細工、雲母で磨き上げられた黒漆喰など、卓越した技が随所に見受けられる。1トンの扉を支える蝶番は油を差さずともなめらかに開閉することができるというから驚きだ。麻の葉には魔除けや厄除けの意味がある。入口部分には白蛇の模様があしらわれているが、これにもネズミ除けや魔除けの意味が込められている。内蔵の角は銀杏水切り仕上げとなっており、黒漆喰同様こちらも現在の左官技術では完璧に再現できないと言われている。
内蔵は冠婚葬祭の際に使われており、「蔵は神聖な場所。みだりに蔵に入ってはいけない」という家訓に基づいて内蔵の中は公開されていない。
文/秋田大学 高橋
火事の際、扉の隙間を埋めるための「味噌」
昔は堰に流れる水で洗濯をしていた
以前使われていた物が飾られている