武家屋敷風八百屋さん?
角館駅を出て少し歩くと他の景色と比べて一足早く武家の趣を感じさせる建物が見える。ひっそりと道路わきにたたずむその中はスーパーが各地に広まるまで生活を支える主流となっていた昔ながらの八百屋さん、「さかい屋」だ。多様な野菜と手書きの値札が並ぶその光景には、母に手を引かれて買い物をした幼き日が思い返された。
そんな懐かしい雰囲気の中に小さな喫茶店のようなスペースが設けられている。甘い香りに誘われてこの席へと赴けば、八百屋から一転してフルーツパーラーのスイーツを味わうことができる。カウンター席とテーブル席がいくつか並んでおり、入れ代わり立ち代わり人が訪れていた。テーブル脇に置かれた「さかい屋ノート」にはこれまで訪れた人の喜びや感謝の言葉がつづられていた。その出身地も県内にとどまらない。
早速メニュー表を手に取ると、写真ではなく地元のデザイナーの人が手書きで描いたかわいらしく鮮やかなイラストにその味への好奇心がそそられる。またそのボリュームはかなりよく、トッピングには意外なものも多い。どんな味なのか想像するだけで楽しく目移りしてしまった。実際に注文が届くとパフェごとに器も異なりこだわりが伺えた。スプーンを通すと思った以上にやわらかな感触。口に運べば濃厚なミルクの香りとふんわりとした食感のソフトクリーム、果実のさわやかな甘さと程よい酸味が身体にしみわたり、その幸福感にほっと息をついてしまった。トッピングの果物も新鮮で味が濃い、あっという間に食べ終わってしまった。
「憩い」の八百屋。彩りパーフェクト。
地元への想いと誇り
ここさかい屋の店主、堺研太郎さんは角館の商工会会長も務めている。駅近くの観光スポットである西宮家が賑わっていくことに一役買った人物だ。そんな堺さんには観光地だからと言ってその商売への意気込みや訪れる人への感謝をおろそかにすべきではないという思いがあった。
このさかい屋のフルーツパーラーは、西宮家を整えたあとでさかい屋も活気づけたい、という思いから店舗を改築して始められた。観光地にあるけれども、地元の人が気軽に立ち寄れる場所を目指したそうだ。そのため、もともと観光客向けの宣伝はしていなかったそうだが実際に訪れた人たちの口コミで広がり、今では人気のスポットになっている。堺さんは本物の価値は実際に訪れた人にしかわからず、観光地としての名産品を推すのではなく実際に食べた人が誰かに勧めたくなるようなものにしたい、観光地というブランドに頼るのではなく実際食べて満足してもらえるような工夫が必要だと強くおっしゃっていた。たとえば、このフルーツパーラーでは季節ごとに旬の果物を使ったパフェを作ったり、独自のブレンドで果汁を配合したソフトクリームを作ったりしている。その年によっておすすめも変わるため、同じ時期に訪れても同じ味が食べられることはない。訪れるたびにその瞬間でしか味わえないおいしさを堪能することができる。
さかい屋のその仕事への誇りと地元の人への想いがそのスイーツの一番のかくし味になっている。
文/秋田大学 野中
Information
フルーツパーラー角館 さかいや
〒014-0368 秋田県仙北市角館町中菅沢92-81
☎0187-54-2367
■定休日:不定休
■営業時間:9:30~18:00(パフェ提供は9:30~)
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角館駅から徒歩4分。
季節のフルーツをふんだんに使った贅沢パフェを提供してくれるお店です。八百屋だからこそ出せる色とりどり、種類豊かなフルーツたちは見て良し、食べて良し。
趣のあるお店に入って左側がパフェ提供スペースになっており、子供から大人まで地元の人々に愛される憩いの場所です。
散策でたくさん歩いた自分に甘いご褒美をあげましょう!