文化・歴史

赤神神社に神がいた

写真 赤神神社

赤神神社の拝殿の脇道から

県道59号線を北上し左手に鵜ノ崎海岸・ゴジラ岩を眺めた先、民家たちに寄り添うようにその神社は鎮座する。男鹿の潮風を浴び続けた年輪を感じされるこの建物こそが赤神神社拝殿だ。
拝殿の脇、背の低い草たちが小石を巻き込みながら黄緑色の絨毯を造る。その道の先、五社堂へと向かう石段が深い森の中に続いている。そして、森の中に入れば空気は一変する。先程まで感じていた太陽の光も、茹だる暑さも、蝉たちの騒がしい声さえも息を潜め、辺りは静寂に包まれる。聞こえるのは風に揺れる木々の音だけだ。
ふと、顔を上げれば緑のグラデーションのトンネルと石段がずーっと奥まで広がっている。幹の太い木々は自由に手を広げ、大小不揃いな岩の間から苔や植物の緑が覗く。
そうして、しばらく石段を登ればひらけた場所に出る。緑に囲まれた大きな池がのっしりと横たわり、碧色の水面に太陽の光が射し込み、池の中を覗き込めば時折、トンボが眼前を通り過ぎていく。池の隣には宝篋印塔(ほうきょういんとう)と大きな地図がある。宝篋印塔とは滅罪や延命などの利益から供養塔・墓碑塔として多く造られていたものである。この宝篋印塔は人の身長を優に超えるほどの大きさで所々に苔が生え、石が欠け、上部分の相輪(そうりん)は別の場所に置いてある。
その隣、本山門前から五社堂近辺の古地図がある。この絵は江戸時代の初めころ、狩野派の狩野定信氏が当時の門前から西海岸地区の様子を描いた「男鹿図屏風」(県指定文化財)の写しだ。地図の中を見てみれば今はない建物があり、当時、信仰により繁栄していた様が垣間見える。

登る登る石畳み。九百九十九段。

この場で僅かながらの休憩を挟み更に上を目指す。ここから道は更に険しくなり、石段の石も大きさが揃わなくなり斜面のようになる。
険しい石段をどんどん登っていくと左手に井戸が見えてくる。これが「姿見の井戸」だ。この姿見の井戸は菅江真澄の男鹿遊覧記にも登場し、そこには「坂を遙かに登ると、姿見の井戸がある。この水鏡が曇り、真個の形が写らない人は、命が長くないと占われる。」とある。また、鈴木重孝編著本、キヌブルイには「弘法大師(平安前期の真言宗の僧であり、真言宗の開祖。)加持の御供水といい三尺余り(約90センチメートル)の丸石の井なり、深さ一丈余(約3メートル)。井水に姿を写し見えざれば、三年の中に没すという清水なり。登山の男女漱(口をすすぐこと)をなす」とある。

巻の五社堂現る。

ここまで来れば五社堂は目の前だ。鬼たちが積み上げた九百九十九の石段の先、男鹿の自然の中に佇む五つの社の姿は圧巻である。森に囲まれた五つの社、赤神神社五社堂である。左から、「十禅師堂」「八王子堂」「赤神権現堂(中央堂)」「客人( まろうど)権現堂」「三の宮堂」と呼ばれ、赤神神社に伝わる九百九十九の石段に登場する五匹の鬼たちを祀っていると言う。また、建保四年(1216)に比叡山の山王七社を勧請して造られたが、その後二社が廃れたため現在の五社になったとも言われる。橘氏、安東氏の崇敬を受け、国替えにより秋田へ移った佐竹氏に篤く信仰された。
現在の五社堂は宝永七年(1710)に建てられた。また、赤神権現堂内にある厨子(ずし。仏像・教典・位牌などを中に安置する仏具の一種)は、室町時代後期のものと推定される。これら五社堂と、赤神権現堂内の厨子は国により重要文化財に指定されている。
五社堂は正面入母屋造と言われる平安時代より神社で応用された様式で、形は同じだが、よく見ると細かな装飾などはひとつひとつ異なっている。イノシシや象などが彫られた柱をじっくり観察してみてはどうだろうか。
五社堂の右側にはお守りなどが売られており、その奥には伝説の中に登場する逆さ杉が置いてある。また、休憩用の椅子が数個置いてあるので、自然の音を聞きながらゆっくり休憩するのも良いだろう。人々の喧騒から遠ざかり、ふきと県の木である杉、山の静寂と生き物たちのさざめきに囲まれながら赤神神社はこの場所に在り続ける。

文/石塚

写真 赤神神社

 

インフォーメーション

一気に石段を駆け上がるのもいいが、周りの風景を楽しみながら登れば更に男鹿の自然を楽しめるでしょう。五社堂周辺は綺麗に整備され、ゆっくり五社堂を眺めながら休憩もできます。参道から見て右側にお守りなどを売っている社務所もありますので、ここで赤神神社参拝記念に自分やお土産用のお守りを買うと良いでしょう。また、おみくじもありますので、旅の運試しにどうぞ。雨天時、または冬季期間中に登るのは危険ですのでお気を付けください

写真 赤神神社
赤神神社・五社堂
〒010-0535 秋田県男鹿市船川港本山門前字祓川35 赤神神社五社堂
赤神神社から五社堂までは、山道を20~30分ほど登る。

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